「ん…」


あ、


そっと目を開くとさっきよりも結構暗くなった階段が目に入る


…やべぇ


寝てた


完全に寝てた


ピアノの音が聞こえない



…うわ、多分さっき名前呼んでたのピアノの子だな


立ち上がろうとした時…


体にかかる布に気づいた



…なんだこれ


ブランケット…?


最近女子が持ち歩いているちっさい布団


赤色でシンプルなそれはどこかいい匂いがした





「ピアノ…」



音楽室の扉を開けるとそこには誰もいなかった


まあ…そうだよな


結構寝てたみたいだし


さっきまで誰かが弾いていたであろうピアノに触れる


きっとこのブランケットはこの子がかけてくれたんだ…


誰だかわからないのに俺の胸は何故か高鳴り


とてつもなくこのブランケットの持ち主に会いたいと思った


ここに置いていけばおそらく明日この子の手に帰るだろう


でもそれじゃあお礼も言えない



直接渡そう


決心した俺は丁寧にブランケットをたたみ


旧校舎を後にした