「……これ、弥生ちゃんにあげる」
マサさんは、私の手に何かを握らせた。
鍵だった。
「……っ、こんなの」
マサさんが居なかったら、意味がないのに。
「弥生ちゃんに持っててほしいんだ」
しゃくりあげる私を、マサさんはぎゅっと強く強く抱きしめてくれる。
「この景色、弥生ちゃんの好きな人に教えてあげてね」
ずいぶん酷いことを言うんだな、と思った。
けれどマサさんはちゃんとそれを分かっていて、それでも私のために言っていることも、私はちゃんと分かっている。
だってこの人は、こんなにも優しい。
「……弥生ちゃん、今までありがとう」
そう言ったマサさんの声は、少し震えていた。