「どうされました? 光一様」

 家に帰った光一は明かりをつけないまま、窓際の椅子に座り、スマホを眺めていた。

「また発信しましょうか?」
と田畑が訊いてくる。

「いや、電話をかけたいわけじゃない。

 ……じゃないんだが。

 なんでもうちょっと誘わなかったんだろうなと思ったんだ。

 ラブラブデートをしないといけないのに」

 田畑が、ちょっと笑いながら、
「西辻花鈴様のことが苦手なのですか?」
と訊いてくる。

 いや、そんなこともない気がする。

 だが、もうちょっと強引に誘えばよかったのに、できなかった。

 同じひとつのブランケットに入って、ちょっと恥ずかしそうに自分を見上げてきた花鈴を思い出し、なにも言えなくなってしまったのだ。

 ……今ならもう一緒にブランケットに入ろうとは言えないな。