そんなくだらぬ話をしている間、光一がずっとブランケットをもふもふ触っていたので、
「もしや、専務もお疲れですか?」
と訊いてみると、

「ちょっとお疲れかもな」
と光一は言ってくる。

「専務でも大変なことってあるんですね」

 花鈴は思わずそう言ってしまった。

 なんでもサラッとこなしそうな人に見えたからだ。

「当たり前だろ。
 むしろ、なんでないと思う」
と言う光一に、花鈴はそのブランケットを手渡した。

「専務、これお貸ししましょうか」

 自分などより、若くして専務になった光一の方が余程大変な気がしてきたからだ。

「これに包まれて目を閉じてると、いつでも何処でも、部屋のベッドで寝てるみたいにくつろげますよ」

「いや、いい。
 お前の大事なもふもふだろう」

 そう言ったあとで、光一は、そうだ、といきなり、花鈴と自分の肩にそのブランケットをかけた。