……つ、ついて来てしまいました。

 というか、なんだかんだ言いながら、家まで送ってもらえるかな、と期待していたのに、湾岸沿いのなんか高そうなホテルに連れてこられました。

 しかも、わあ、対岸の工場の灯りが海に映って綺麗だな~とか喜んだのも束の間、あっという間に分厚いカーテンを閉められてしまいましたよ……?

 花鈴は電動で閉まりゆく遮光カーテンを呆然と見つめていた。

 刑務所の門が閉まっていくときみたいだ、と思う。

 いや、刑務所に入ったことはないのだが……。

 ドアにオートロックで鍵がかかった瞬間より、閉じ込められた感じがした。

 視覚的に外とのつながりが遮断されてしまったからだろう。

 ウエディングドレスを買ったという安芸と別れて三十分。

「ねえ、お客さん、今日は誰か追ってかないの~?」
とスリルを求める運転手にまだ安芸が困らされている頃に、もうこんなことになっていた。

 あの路上に戻りたい。

 なんかやり直したい、いろいろと。

 何故、こんなことに?

 いや、専務のことは嫌いではないのですが。

 いろいろと心の準備とか、準備とか、準備とか……と動転しながら、もう外が見えなくなってしまったカーテンをまだ見つめている花鈴に、後ろから光一が呼びかけてきた。