朝一番に研究棟に持っていくものがあったので、早足で歩いていると、例の自動販売機の前に安芸ではなく、光一が居た。

「……おはよう」

「お、おはようございます」
と花鈴は赤くなって言う。

 いや、もう言ったのだが、今朝は。

 花鈴、と呼びかけてきた光一は、
「昨日は急にすまなかった」
と謝ってくる。

「だが、おはようからおやすみまで、お前と居たいと思ったんだ」

「じゃあ、僕は、おやすみからおはようまでがいいな」

 おはよう、と言って、何処からともなく現れた安芸が、ガシャンッと自動販売機のボタンを押す。

 コーンスープの香りがしてきた。

 朝食なのだろうか、と思う花鈴の前で、光一は安芸に、

「莫迦か。
 それだと夜は空いてるじゃないか」
と言われ、……そうでしたね、と呟いていた。