「いや、今から斎藤さんと会うのよ。
 早く来すぎちゃって、暇つぶしにかけたのと。

 もしよかったら、一緒にどうかな~と思ったんだけど、お邪魔よね」

 ああ、あんたに言われた通り、普段通りの私らしい服を着てきたわよ、と詩織は言う。

「いや、二人きりって恥ずかしいなって思ったんだけど。

 やっぱ、いいわ。

 四人じゃ、いい雰囲気にもならないものね、じゃ」
と可愛らしいことを言いながらも、詩織は、いつも通り、あっさり切ろうとした。

「待ってください、堀口さん~。
 専務の名前が呼べないんですよ~」
と離れたバルコニーで、この家の執事っぽい人と話している光一を窺いながら、花鈴は言った。