自分では光一さんっ! と叫んだつもりだったのだが、緊張しすぎて脳をやられていたのか、しりとりの後遺症か。

 何故か、コツメカワウソッ! と叫んでしまっていた。

 しかも、まったく気づかないまま、

 やった!
 やりましたっ。

 どうですかっ? 専務っ!

 ご主人様っ、ほめてくださいっ、と言わんばかりに光一を見つめてしまう。

 だが、光一の耳にはもちろん、
「コ、コツメカワウソ!」
という叫びしか届いてはいなかった。

 光一がちょっと呆れたように言ってくる。

「……まだやってたのか、しりとり。
 食べないからな、コツメカワウソ」

 だが、自分では光一さんっ、と呼んだつもりの花鈴は、
「え? しりとり?」
と訊き返していた。

「しりとりなら、ルで終わりましたよね?」
と言ったあとで、専務、実は、しりとり続けたかったのかな? と思ってしまい、

「ル……

 ルー」
とカレールーのつもりで言った。

 だが、ルー、と言った瞬間、ちょっと冷静になった頭が、今、叫んだ言葉を思い出していた。