「いつでも、もふもふして大丈夫ですよ。
 専務が落ち込んでも、落ち込まなくても」

「……光一」

 え? と見上げると、
「……職場じゃないんだ、光一で頼む」
と光一は言ってくるが、その視線はまるきり、よそを向いている。

 光一は窓の外、気持ちのいい初夏の庭で剪定(せんてい)している庭師のおじいさんを何故か凝視していた。

 い、言って差し上げたいんですがっ、そんな専務のためにっ。

 でもいきなり光一さんとか、恥ずかしすぎるっ!
と花鈴は内心、のたうち回る。

 ……恥ずかしいですよねっ?

 恥ずかしすぎませんかっ?
と心の中で詩織に呼びかけてみたが、

「なにが?」
と妄想の中の詩織もリアルと同じく、つれなく言ってくる。