「田畑が言ったんだ。
 俺にいいと思う女が現れなかったのは、ずっと高校生のときのお前が心に引っかかっていたからだと。

 だから、他の女を好きにならなかったんだって」

 いやいや。
 そんなことはないと思いますが。

 そんな風に思ってくれることが嬉しい、と花鈴は思った。

「もっと他人に怒られたいと思ったのも初めてだ。

 この間、珍しく常務と揉めて。

 あの人、子どもの頃から俺を知ってるから、結構頭ごなしに叱ってきたんだが。

 俺は嬉しかった。

 お前が物陰から心配そうに見ているのが見えたからだ。

 俺は思った。

 やった。
 これでお前と毛布でもふもふできると。

 お前のことだから、きっと、元気を出してくださいと言って、俺を毛布に入れてくれると思ったんだ。

 ……なのに、すぐに常務がフォロー入れてきたから、感謝しつつも、ちょっと恨んだ」
と言うので、笑ってしまう。