「お前は低血圧なのか?」
と光一が訊いてくる。

「はあ。
 いえ、違います。

 でも、低気圧だといい女な感じがしますよね」
とトンチンカンなことを言ってしまったのだが、光一は何故か、深く頷き、

「そうか」
とだけ言ってきた。

 お前は台風か、などと突っ込んでくることもない光一に、

 あの、聞いてます? 私の話、
と不安になって、花鈴は、その横顔を窺ったが。

 光一は教習所で習ったままのような直立した姿勢で前だけを見て運転していた。