「どうですか、ここの生活は?
僕はだいぶ慣れてきたところですかね」



朱笆さんは、ふいに私に聞いてくる。




「そうですね、すこしだけ・・・・」



私ははっきりしない曖昧な口調で返した。




「まだ、どうしたらいいのか分からないって顔はしてますね」



朱笆さんは私の顔を見てそう言う。




「えっ・・・・あ、まあ」



この人はエスパーなのかと思うが、私を見てればだいたいが分かってしまう事だと言える。



だから、不思議なことではない。




「そうですか。でも、最初と比べれば変わってきているのではないかと思いますよ」



「えっ・・・そうですか?」



何気なく言われて、少しキョトンとなるが、確かにそう言えるのかもしれない。



「はい、何も急がなくていいんです。少しずつ殻を破っていけば大丈夫です」




「少しずつ・・・・」



何かが胸に感じる感情が現れる。



不思議と嫌な言葉ではなかった。



「非常識かもしれないんですが、今の状況に少し楽しんでいるんですよ」



朱笆さんは何気なくそう言う。




「楽しい?」



「はい、普通の生活では送ることのできない、この生活に」



普通ならそんなふざけた言葉出る訳がない。



でも、多少はそう感じるものがあるのかもしれない。



「楽しい・・・・」



けど・・・・。



私はどの地点で彷徨っているのだろう。




変わってきている?



楽しい?




心の中では賛同できても、気持ちではそうはなっていない。



私にはわからない・・・・。