「すごいですね、朱笆さんって」



「そうですか?単に理解読が早いだけですよ」



私からすればすごく羨ましい事なんだけど。




「私なんて、既につまずいてます」



「まあ、大丈夫ですよ。これは僕のテンポなんで。沙紅芦さんは沙紅芦さんのテンポでやっていけば大丈夫ですよ」



「そうですよね」



「はい、それに僕は・・・・。確かに頭は秀でているかもしれません。でも、それで良い事なんかなんにもないんですよ。才能があっても、それが無くなったら用済みになって、追い詰められるんですから・・・・」



朱笆さんは少し悲しそうな瞳でそう言う。



(用済み?追い詰められる?)




私は何かを言うべきだろうかと考え込むが・・・・。




「まあ、過去の事なんかどうでもいいんですよ。大事なのは、今何をしているかという事です」



「えっと・・・・」



まるで、自分の事は考えてもらわなくて大丈夫なような雰囲気を持ち出す。




「難しいお話しをしてしまいましたね」



気になった私は、つい朱笆さんに聞き込む。



「何か嫌な思いでもされたんですか?」



「いいえ。ただ、そう思っただけです。ですが、君は本当につらい感情をお持ちなんでしょうね」



「・・・・・・・・」



無理矢理、私の方に向けられる。



というよりは、わざとそうすり替える感じだ。







やはり、朱笆さんも何か抱えているんだ。



当たり前だ。



抱えていなかったらここにいないから。