その後、碧斗くんは先にリビングに向い、私は洗面所へと向った。



「あっ」



洗面所へ入ると、先に向かっていた紫衣羅くんが洗面所から出るところだった。



「ん?どうかした?」



「あ、いえ」



碧斗くんが言っていた言葉が脳裏にちらつき、思わず紫衣羅くんを見つめる。




「・・・・あ、あの」



「ん?」



声を掛け私はそっと紫衣羅くんに近づく。



「あのね、碧斗くんが言っていたんだけど、紫衣羅くんって腹黒いの?」



「えっ?」



その尋ねに紫衣羅くんは、ぽかんとなる。



「碧斗くんがね、そう言っていたの。紫衣羅くんは危うくて怖いって」



「・・・・何それ?」



「私もよくわからなくて・・・・」



最初はぽかんとしていた紫衣羅くんだったけど、なんとなく納得するかのような表情になる。




「でもまあ・・・・。あいつの沙紅芦に対しての振る舞いは、なんとなくムカっとするけどな」



「・・・・そうなの?」



正直、今のは質問の答えに合っているものなのか分からないが、多分合っているんだろう。



「うん、普通に注意した方がいいんだけど、時々素が出るから困るよ。本当にあいつは・・・・」



(素・・・・?)



その時言ったときの紫衣羅くんの表情は、軽やかなものではなく、むしろ冷たく自分を蔑ました表情に見えたのだった。




なんだろう、今のは・・・・・・・・。



(気のせいだよね)




「紫衣羅くん、あの、ありがとうね」



紫衣羅くんとラウンジに向かいながら、看病してくれたことについてお礼を言う。



「えっああ、別に。つっても、少しだけだよ?」



「それでもすごく嬉しかった。暖かくて優しくて、すごく安心できたから。本当に不思議で、人ってすごいんだね」



感じた思いを伝えるが、紫衣羅くんは賛同はしてくれる様子はなかった。



「・・・・・・・・俺はよく分かんないよ。看病とかされたことないし」



「そっか・・・・・」



(そういう人もいるよね・・・・)



だから、私は特に気にはしなかった。