「この屋敷どんだけ広いんだよ。掃除するだけで大変」



「あー確かに広そうだもんな」



「んーじゃあ、分けてやるか」



「そうしてもらえると助かります」



「分かった」



あれから数日が経って、みんなはもう慣れ始めている気がする。



どうして、そう明るく接する事が出来るんだろう。



私にはどう見ても出来ないことだ。




「ごちそうさまでした」



私は先にダイニングから出ようと席を立ち上がる。



この空間は居心地が悪い。



こういうにぎやかな感じは慣れていないので、どうしたらいいのか分からない。



「・・・・・・・・」



私に居場所などある訳がないんだ。




「あっ沙紅芦ちゃん!」



「!」



その時、ダイニングから出て部屋へ向かおうとする私を、碧斗くんが呼びとめた。



「あのさー」



「?・・・・!?」



対した意味もないのに碧斗くんは、人と話す距離以上に近付き抱きつこうとする。



「な、何か用事があるんじゃあ・・・・」



抱きつかれるのはさすがに困った私は、言葉で動きを制止させる。



「特にないよ」



「えっ」



「なんかつまらなそうにしてたから」



「・・・・・・・・」



(つまらなそう・・・・)



記憶は確かにないけど、一人でいて他人から気にしてくれるような言葉をかけられた事は今までなかったと言える。



他人からは私はそう見えてしまっているのだろうか。




「もし不安なら一緒に寝る?あ、寝たい!寝ようよ♪」



「えっと・・・・」



冗談混じりで言ってくれているはずなのに、目が色々本気ぽくって怖い気もする。



「碧斗、欲を出すな」



いつの間にか近くに来ていた紫衣羅くんが、呆れた声で碧斗くんに注意する。



「えっ俺、一緒に寝たい!」



欲望丸出しで肩に手を置かれる。



「肩を抱くな・・・・」