洗面所を出るとちょうど碧斗さんがいて、鉢合わせの形になる。




「あーー!」



「!」



私の姿を見るなり碧斗さんは突然大きな声を上げ出し、その声にびくっとなる。



「沙紅芦ちゃん♪」


    ・・・
(沙紅芦ちゃん!?)



ちゃん付というか、他人から名前で言われるのがすごく久しぶりな気がした。




「やっぱりいいね♪朝起きて部屋を出ると、可愛い女の子がいるのって、すごく幸せだね♪」



「・・・・・え、え・・っと」



こっ こういう時はどういう反応を示したらいいんだろうか、本気でわからない・・・・・。



「にしても、君ほんとに可愛いね~?」



「えっ」



そう言っては、だんだん私に近づいて来る碧斗さん。



「あ・・・・あの」



本気でどういう対応を取ればわからず戸惑っていると━━━。




【バシっ】



「あだっ」



「!」



「廊下で口説いてんじゃないよ」



いつの間にか来ていた紫衣羅さんが碧斗さんの頭をたたく。



「いたいなー。口説いてるんじゃないよ、近付こうとしてるんだよ」



「・・・・一緒だから、それも」



「大きな違いがあるんだよ」



「ああ、そう」



どう違いがあるのだろうと頭を傾げる。



「女の子がいるんだよ!口説かなきゃ!」



(あれ?さっきいていた言葉は?)



「結局、一緒だろうが」



「全然違うから!」



いったい何が違うのだろうか、まったく不明だ。



「つーかさ、その顔でよくどうどうと言えるもんだな」



(確かに、碧斗さんすごく可愛い顔立ちしていて女の子みたいだもんね)



「えっ あー驚きでしょ?よく言われるんだ~。でも、かわいい女の子には目がなくてね。
沙紅芦ちゃん、ほんとっかわいいよね~♪」



「そうだねー」



紫衣羅さんは鬱陶しくなったのか、碧斗くんの応答に適当に流す。



「あー適当に言ったでしょ!本気なんだよ、俺!」



「わかったから、リビング行くよ。君も行こ」



「あ・・・・はい」