意味不明な環境の中、ずっと黙っていたグレーの3つ編みのした男の人が、穏やかな表情のまま私に顔を向ける。




「ねえ、君はどうしてここで眠っていたのか分からないんだよね?」




「は、はい」




そして、彼は続けるように私に尋ねる。




「じゃあさ、さっきまで何をしていたか覚えてる?」




「さっきまでの事・・・・?」




「うん、ここで目を覚ます前の事」




(さっきまで・・・・)




彼の言葉に私は一瞬、異様な想像が浮かんだ。



それは皮肉にもいいものとは決して言えるものではなかった。




彼の「さっきまで何をしていたか」という言葉に、グレーの3つ編みの彼を筆頭に、それぞれ順に答えていく。




「俺は帰宅中に、突然真っ白になったんだ」




「俺は部活中かな」



「僕は会社の実験中に」




「俺は仕事で外出していた時に」




グレーの3つ編みの彼から可愛らしい男の子、その次に綺麗な顔立ちの人、そして、キツ目の赤い髪の人を順に答えて、最後に私に向けられる。




「で、君は?」





全員に向けられるものの、その質問に合う答えは出ることはできなかった。





(私は・・・・・・・・えっと・・・・・・・・あれ?)




なぜなら、それは・・・・・・・・。




さっきまで何をしていたのか、思い出そうと考えるが━━━━━━。




どんなに記憶を絞りだそうとしても、答えは見つかる事はなかった。







゛何も分からない。




何も出てこない。゛






それ以前に、何一つわからない。





そもそも、さっきまで何していたかという以前に、自分の事が一切わからない。





(嘘・・・・えっ)




突然の感覚に動揺が抑えられず、思わず嫌な汗が流れる。






「ん?どうかした?」




「あ、いや・・・・えっと」





中々答えようとしない私に、心配そうな視線を向けられる。




最初、目が覚めた時、妙な感覚があったのは事実だけど、多分それは、一時期的なものだと気には止めていなかった。




(だけど、これは・・・)