『そういや、今日もおばさん遅いの?』


『ああ、うん。遅いと思う』



『そっか』


架乃の家は母子家庭で、架乃が幼い頃に離婚したらしく、それ以降はずっとおばさんと2人で暮らしている。


でも、架乃は実の父親と一度も会ったことがないらしくて、架乃曰くおばさんはあまりおじさんの事を話したがらないらしい。


理由はよくわからないが・・・・・。


多分、離婚しているからあまり思い出したくないのかもしれない。



『じゃあ、今日家来る?今日お母さん早めに帰ってくるし』



『いいの?』



『うん』


『碧斗のおばさんって働いてるんだよな?』


『うん』



『にしてはいつもいるよな』



『そんな事ないよ。昨日は遅かったし』


『そっか』


『まあ、暗くなる前に帰ってくることは多いかな』



『・・・・・・・・』



架乃のおばさんはいつも帰りが遅くて、昔からこうして家に訪れる事が多い。


『いいよね、いつも仲良しで』


『そう?普通だよ』


『そうだけどさ、普通はお父さんとお母さんがいる家庭が普通でしょ?』



『まあね』



架乃はお父さんという存在を知らなくて、だからなのかもしれない、俺の普通の家庭に憧れを抱くのは。



『そういえば、昔おじさんに会ったことが会ったって言ってなかった?』


『ああ、らしいね。覚えていないけど、だって1~2歳の頃だもん。でも、その頃2年くらいお母さんと離れていたのよね』


『えっ何それ?』


『よくわからないけど、なんか変なのよね。よく考えると』


『それも話したがらないんだっけ?』


『そう、変だよねー』


架乃曰く、おばさんは普段隠し事をする人ではないのだが、おじさんが絡みになると話がらないらしい、どういうわけか。


それぐらい嫌な思い出があったって事だろうと思っている。