紫衣羅くんに言われた通りに碧斗くんの部屋に訪れると、碧斗くんはすんなりと扉を開けてくれた。



「沙紅芦ちゃん?」



「碧斗くん、これ」



「あ、ありがとう」



「・・・・」


いつもの明るい碧斗くんらしさがなく、どこか浮かない表情だ。


「大丈夫?」



そんな碧斗くんに気に掛けるかのように声を掛ける。



「えっ何が?」



私の言葉に少しからずキョトンとする。



「なんかつらそう。いつもより元気がない」



「!」



私の言った言葉に反応した碧斗くんは一瞬ぴくっとなるが、すぐに否定する。


「そんな事ないよ」



「でも、いつもの碧斗くんぽくない」



すると、碧斗くんは何かに気づき頷きを見せる。



「ああ、そうだね。いつもなら抱きついているからね」


「・・・・」


(確かにそれは言えてる)


私の心配を装いに碧斗くんは緩い笑みを浮かべる。



「君は正直だね・・・・」


「碧斗くん?」



やがて、彼は一瞬瞼を閉じては開け私を見る。



「大丈夫だから、少ししたら普段通りに戻るから。だから、今は1人にして、ねっ?」



「・・・・・・・・」


中々頷かない私に碧斗くんは「お願い」と懇願する。



「わかった」



碧斗くんのお願いに私は素直に聞き入れると、碧斗くんはやんわりと「ごめんね、ありがとう」とお礼をつぶやいた。







【パタン】




ゆっくりと碧斗くんの扉を閉め、リビングの方へ足を向ける。



と、ふいに碧斗くんの扉を見つめる。



「・・・・・・・・・・・・」



突っかかる感情を胸にリビングへと向かったのだった。







やっぱり何か抱えているんだ、何かを。



そうだよね、そうじゃないと・・・・。



だけど、つらそうにしているのが気に掛かる。



気に掛かって仕方ない。



私の感情ならこんな事思うはずないのに、変だ。