オードリー・オルコットは、アンスバッハ侯爵の屋敷に連れてこられていた。
一室を与えられ、書庫への入出許可だけが出されている。

イートン伯爵邸から連れ出された後、ザックとは別室で取り調べを受けたオードリーは、警備兵から執拗に毒の入手経路について質問を受けた。
そこでようやく、自分がバイロン殺害の片棒を担いていると思われていることに気づき、ゾッとしたのだ。
ただ不思議だと思ったのは、それを疑うならもっと別のタイミングがあっただろうという点だ。

彼女の形だけの婚約者であったウェストン伯爵は、ザックを狙った輝安鉱殺害未遂事件の首謀者なのだ。
毒殺未遂関与を疑われるのならば、このタイミングの方が自然だ。

それを指摘すると、警備兵はなぜかしどろもどろとなり、追及する態度も軟化していった。
そして数日後には、アンスバッハ侯爵が引き受け人となることが決まっていた。
王都の貴族街に位置する侯爵邸に連れてこられ、一室に軟禁状態。けれど待遇は悪くなく、食事もきちんと与えられている。
オードリーには何が何だか分からないままの状態だ。