ナサニエルは、自分にも侯爵と似たところがあると、改めて感じた。
自分の考える未来を彼らに実行させるのは、押し付けの愛情でしかない。
共有できる理想を胸に、互いに意見を出し合わなければ、みんなでいる意味がないのだ。

喉のあたりが熱く、ナサニエルは声が潤むのが抑えられない。
だが、ここで黙ってしまっては元の木阿弥だ。言葉を尽くさなければすれ違いを産むだけだと、子供たちに何度も諭された。

「……おまえたちは、大人になったな」

「そりゃ、死にかけたくらいですしね」

「俺だって伊達に療養していたわけではありません。戻って来たからには、同じような逃げ方はするつもりありません」

ナサニエルは微笑み、ようやく肩の荷を下ろす。

「……では、お前たちに頼みがある。侯爵から政権を奪うため、協力してほしい。私が弄していた策も全部話そう」

「はい」

「ケネスも入ってくれ。いいですよね、父上。彼は俺の頭脳です」

「ああ、もちろんだ。ロザリンド嬢も話に入ってほしい」

難しい話が始まるのならと奥の部屋に引っ込もうとしていたロザリーは、ナサニエルから呼ばれ驚いた。

「私にできることがあるんですか?」

「ああ。君にはカイラとクロエ嬢を守ってもらわなければならない」