第二王子アイザック・ボールドウィンは、現在すべての役職を解かれ、城にある自室に軟禁状態となっている。出入りが許されているのは生活の世話をするメイドや従僕だけ。日に一度、取り調べと称して警備隊の長がやって来る。
確認する内容はいつも同じだ。
バイロン第一王子が倒れた日、何処に居たか。直近で彼の寝室を見舞った日はいつか。輝安鉱のスプーンを自らに使われたとき、破片を入手しなかったか、など。ザックは同じ返答を何度したか分からない。
加えて、バイロンに対する感情も、勝手に決めつけられた。

「幼少期、バイロン様はアイザック様に殊更つらく当たっていたとか。憎悪の感情があっても致し方ないだろうと我々も思っております。ですが、罪は罪です。もし本当に犯したのだとすれば、償っていただかなくては」

「だから誤解だ。たしかに子供の頃は兄上と不仲だったが、最近はそうでもなかった。兄上の考察の深さに驚かされることもたびたびあって、俺は兄上を尊敬していたんだ。平民上がりの王妃の息子である俺は王位に興味はないし、王位にふさわしいのは兄上だとずっと思っていた。むしろ兄上に死なれたら困るとさえ思っていた」

「王位に興味はない? そうでしょうか。アイザック様はご政務にも精力的でいらっしゃった。それは、まず政治力を国民に見せつけようと思ったのでは?」