いや、気分じゃない。騙してるんだ私は。
黙っているってことは、騙しているも同然。
蓮さんには……ちゃんと言いたい。でも……なんて言えばいいんだろう。
もし話して、『騙してたのか?』って思われたらどうしよう。
蓮さんはそんなことを思う人じゃないだろうけど……それでも、軽蔑されるかもしれない。
蓮さんに軽蔑されることだけは、嫌だった。
「……由姫? どうした? 怖かったか?」
「あ……い、いえ、何も!」
心配してくれる蓮さんに、胸が痛む。
――ドンドン。
玄関を叩く音が聞こえて、ふたりで一斉にそちらへと視線を向ける。