翌朝カルミアは巨大な袋を担ぎながら学食までの道を歩いていた。リシャールが見たのならすかさず奪われるような、重さを感じさせる包みだ。
 けれどここにリシャールはいない。時間も早いため、おそらく自分が一番乗りだろう。
 そう思っていたカルミアは、厨房に顔を出しすなり目を見張る。
 どさりと荷物を下ろしてから表情を和らげた。

「おはようございます。早いんですね」

「あんたが遅いんじゃないのなかい。小娘」

 すでにベルネは自身の特等席を陣取っていた。
 時計を見るが、伝えていた時間にはたっぷりと余裕がある。カルミアが嬉しそうに微笑むと、ベルネは居心地が悪そうに腕を組み直していた。
 二人が顔を見合わせていると、もう一人の仲間も出勤してきたようだ。

「あ! 二人とも早いですね! 僕も待ちきれなくて来ちゃいました」

 ロシュの発言にカルミアは吹き出し、ベルネはこいつという顔で睨んでいる。

「みんな早い、ということでいいですよね。今日はやる事がたくさんありますし」

 はやる気持ちはみな同じらしい。カルミアは嬉しそうに二人の顔を見比べる。ベルネは不機嫌そうにしているが、やる気がなければ姿を現すはずがないとわかっている。ロシュの明るい笑顔からは、訊くまでもなくやる気が溢れ出ていた。
 いよいよ学食は新たな一歩を踏み出す。まずはそのためのミーティングだ。

「先日の一件で学食が変わったことは学園中に周知されたはず。先生方や生徒のみなさんにも宣伝を頼んでいるから、今日からはお客様が増えると思って間違いありません」

「おおっ! なんだか忙しくなりそうですね!」

「あんたが言うと、どうも緊張感にかけるねえ」

「えー、ベルネさんてば酷いですって!」