料理対決を終え、ベルネとも和解したカルミアは自室に着くなりベッドに倒れ込む。徹夜明けからの料理勝負、ベルネの問題、その全てから解放されたことで深い眠りへと落ちてく。
 そして次に目が覚めたのは翌朝、昼前のことだった。

「完全に寝過ごした……」

 朝には起きるつもりでいたカルミアは額に手を当て項垂れる。眩し過ぎる日差しは早く起きろと言うようで居心地が悪かった。
 しかし言い訳が許されるなら疲れていたのだ。それもとてつもなく。

「けど、いつまでもベッドの住人になってはいられないわね。今日は貴重な休日、やることはたくさんあるわ」

 学園が休みであれば学食も休みという、わかりやすい休暇の仕組みとなっている。身だしなみを整えたカルミアは昼食と買い物のためにも街へ行くことにした。
 先日の買い物で入手した材料はリデロたちへの差し入れで使い切ってしまい、新たな食材を手に入れる必要がある。だから決して両手いっぱいの食材を一人で食べきったわけではないと言わせてほしい。

(今日中に学食のメニューも考えておかないと。リシャールさんは予算内であればメニューは任せると言ってくれたし、ベルネさんも私が考えることで了承してくれたのよね)

 どんどん密偵の仕事範囲から逸れていく気がするが、これもカルミアに与えられた立派な仕事であり、疎かにすることは出来ないだろう。

(それにしてもロクサーヌは久しぶりね。メニューの参考にもしたいし、どの店に行こうかしら……)

 軽い足取りで職員寮を出発したカルミアだが、すぐに足を止めることになった。

「カルミアさん?」

(なんでさっそく会っちゃうのー!?)

 確かに同じ屋根の下に住んではいるが、学園の敷地から一歩も出ることなくリシャールに見つかってしまった。