慌ただしく厨房に向かえば、ベルネが仕込んでいったスープとパンだけが取り残されている。なんとも寂しい状況だった。
「ベルネさん、やっぱりもう帰っちゃったんですね」
続いてやってきたロシュが厨房を眺めて呟く。
「やっぱりって、ここではこれが普通なの?」
「そうですね。ベルネさんて、誰よりも早く厨房にいたかと思えば、誰よりも早く帰ってるんですよね。厨房の妖精って呼ばれてるくらい不思議な人で、誰も素性を知らないんです。アレクシーネの七不思議かも!」
(あながち間違っていないから凄いわ)
「それでカルミアさん。何を作るんですか?」
「そうね……」
カルミアの視界には悲し気に取り残されたスープとパンが映った。切ない。
「あのパンとスープはこのままにしておけないわ」
(スパイスがあればカレーに作り替えることも出来るけど、あいにくこの厨房にはないみたいだし……)
スープをリメイクできて、固いパンも美味しく食べられる方法。そして短時間で完成することが望ましい。
リシャールも待ちわびているため、カルミアはさっそく調理にとりかかる。有り難いことにロシュが助手を務めてくれることになった。
(そういえば今まで私が作ってきた料理って、ただの異世界の料理だったわけよね……)
料理の天才だと豪語していた過去の自分が恥ずかしい。前世の自分は料理人でもなければ、特別な才能があったわけでもないのに。
(ちょっといろんなところに行ったことがあって、いろんなものを食べる機会があって、自炊してたってだけの、平凡な会社員だったものね。でも、料理をするのは好きだったな)
前世の記憶のせいか、物心ついた頃から包丁を求めていた気がする。そのせいで周囲からは危ないと何度も止められたが、幼いカルミアはしきりに料理をしたがっていた。
(みんなの目を盗んでは調理場に立っていたのよね。あの頃はまだこの世界の調理器具になれていなくて、随分と悲惨な物ばかり生み出していたけど……)
けれどもう、あの頃の自分とは違う。成長したことをこれから料理で示そう。
「ベルネさん、やっぱりもう帰っちゃったんですね」
続いてやってきたロシュが厨房を眺めて呟く。
「やっぱりって、ここではこれが普通なの?」
「そうですね。ベルネさんて、誰よりも早く厨房にいたかと思えば、誰よりも早く帰ってるんですよね。厨房の妖精って呼ばれてるくらい不思議な人で、誰も素性を知らないんです。アレクシーネの七不思議かも!」
(あながち間違っていないから凄いわ)
「それでカルミアさん。何を作るんですか?」
「そうね……」
カルミアの視界には悲し気に取り残されたスープとパンが映った。切ない。
「あのパンとスープはこのままにしておけないわ」
(スパイスがあればカレーに作り替えることも出来るけど、あいにくこの厨房にはないみたいだし……)
スープをリメイクできて、固いパンも美味しく食べられる方法。そして短時間で完成することが望ましい。
リシャールも待ちわびているため、カルミアはさっそく調理にとりかかる。有り難いことにロシュが助手を務めてくれることになった。
(そういえば今まで私が作ってきた料理って、ただの異世界の料理だったわけよね……)
料理の天才だと豪語していた過去の自分が恥ずかしい。前世の自分は料理人でもなければ、特別な才能があったわけでもないのに。
(ちょっといろんなところに行ったことがあって、いろんなものを食べる機会があって、自炊してたってだけの、平凡な会社員だったものね。でも、料理をするのは好きだったな)
前世の記憶のせいか、物心ついた頃から包丁を求めていた気がする。そのせいで周囲からは危ないと何度も止められたが、幼いカルミアはしきりに料理をしたがっていた。
(みんなの目を盗んでは調理場に立っていたのよね。あの頃はまだこの世界の調理器具になれていなくて、随分と悲惨な物ばかり生み出していたけど……)
けれどもう、あの頃の自分とは違う。成長したことをこれから料理で示そう。