来ればあの料理が待っていることをオズは知っていた。学食で働き、まかないから逃れられないロシュとは違う。それなのに自ら足を運ぶオズの気持ちが理解出来なかった。
 するとオズは悲しそうに答え始める。

「どうしてだろう。俺にもよくわからないんだ」

「わからない?」

「こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないが……。ここの料理を食べなければいけない。そんな気持ちが強く胸にあって、どうしても逆らえないんだ」

「その気持ち、僕にもわかりますよ。オズさん!」

 オズの悲壮な発言にロシュが同意する。
 互いにこれまで誰にも理解されず、孤独な日々を過ごしていたのだろう。身近に同士がいたことを初めて知った二人は堅く手を取り合っていた。

「同士だったかロシュ! 君とは良い友好関係が築けそうだ」

「はい。僕が入学したらよろしくお願いします」

(確かにオズとロシュの仲は良好だったわね。そもそもオズは誰とでも親し気に話していて……ってそうじゃない! ベルネさんの仕業? いいえ。精霊にそこまでの力はないはずよ。だとしたら何か、別の強制的な力が働いている?)

 言いたいことはたくさんあるが、カルミアが悩むうちにロシュが食事を運んできてしまう。こんなところでロシュの有能さが発揮されてしまった。
 もはや手遅れ。オズはなんともいえない表情でパンをちぎり、スープに浸して食べている。
 何故そのような食べ方をしているのか。同じ境遇を経てきたカルミアには彼の気持ちが手に取るようにわかってしまう。少しでも柔らかくしようと足掻き、無心に呑みこもうとしている様子は見ていて辛い光景である。

(オズってば、残さず完食してる!)

 その姿は堂々たるものだった。通い慣れた態度といい、初めて体験したカルミアよりも耐性があるのだろう。
 加えてスープはカルミアが食べた時でさえ若干冷めていた。冷たくなってしまった今、さらに完食することは困難だったはず。オズの努力に涙が出そうだ。