突然聞こえた声に顔を上げる。ついには空耳まで聞こえる始末だ。
顔を上げるとやけに見覚えのある校舎が広がっていた。まるで貴族のお屋敷のように立派な造りだ。
門を潜り、敷地に足を踏み入れたカルミアは既視感に襲われる。
(どうして私はこの場所を知ってるの……?)
もちろんアレクシーネを訪れるのは初めてだ。それなのにこの景色を知っていると記憶は語る。
始業の時間にはまだ早く、だというのに先ほどから頭の中で鐘が鳴り響いている。
何度も何度も繰り返されてはうるさいと叫んでしまいそうだ。
(そう、繰り返して……)
耳を塞いでも音は止まない。
それは記憶を探るカルミアを急かすように駆り立てる。
これは何度も繰り返した始まりの合図だ。
(何度も見たわね。だってここはゲームでオープニングイベントが起こる場所だから)
何を言っているのだろう。次第に景色がぼやけていく。
現実なのか夢なのか、立っていることさえも困難になっていた。
ぐらりと頭が傾き、手からトランクが滑り落ちる。
「君、大丈夫!?」
異変を察した誰かが助けに入ってくれる。けれどもう返事を返す余裕がない。
脳内で感じた激しい揺れと、鈍い痛みを最後にカルミアの意識は途切れていた。
『かつてこの国は一人の魔女によって滅ぼされ、一人の魔女によって救われた』
ある一説が唐突に浮かび上がり、途切れたはずの意識が戻る。
これはゲーム画面で最初に表示される文面だ。
すらすらと知らないはずの単語が頭をよぎり、今はっきりとカルミアは違和感の正体に気が付いた。
(この世界、乙女ゲームの世界よね!?)
人生十七年目にしてカルミアは世界の真実に気づいたのである。
生まれてから十七年、これまで何度も疑問に感じることがあった。知らないはずのことを知っていたり、食べたことのない料理を作れたり。まるで自分がもう一人いたような気がしていたが、まさに自分には前世というものが存在したらしい。
カルミアとして生まれる前、自分は別の世界に生きていた。
その世界には魔法が存在しなかった。けれど魔法のように文明が発達していた。
離れていても距離など気にせず会話をすることが出来た。空を飛ぶことも、海に潜り海底まで行くことが叶った。
顔を上げるとやけに見覚えのある校舎が広がっていた。まるで貴族のお屋敷のように立派な造りだ。
門を潜り、敷地に足を踏み入れたカルミアは既視感に襲われる。
(どうして私はこの場所を知ってるの……?)
もちろんアレクシーネを訪れるのは初めてだ。それなのにこの景色を知っていると記憶は語る。
始業の時間にはまだ早く、だというのに先ほどから頭の中で鐘が鳴り響いている。
何度も何度も繰り返されてはうるさいと叫んでしまいそうだ。
(そう、繰り返して……)
耳を塞いでも音は止まない。
それは記憶を探るカルミアを急かすように駆り立てる。
これは何度も繰り返した始まりの合図だ。
(何度も見たわね。だってここはゲームでオープニングイベントが起こる場所だから)
何を言っているのだろう。次第に景色がぼやけていく。
現実なのか夢なのか、立っていることさえも困難になっていた。
ぐらりと頭が傾き、手からトランクが滑り落ちる。
「君、大丈夫!?」
異変を察した誰かが助けに入ってくれる。けれどもう返事を返す余裕がない。
脳内で感じた激しい揺れと、鈍い痛みを最後にカルミアの意識は途切れていた。
『かつてこの国は一人の魔女によって滅ぼされ、一人の魔女によって救われた』
ある一説が唐突に浮かび上がり、途切れたはずの意識が戻る。
これはゲーム画面で最初に表示される文面だ。
すらすらと知らないはずの単語が頭をよぎり、今はっきりとカルミアは違和感の正体に気が付いた。
(この世界、乙女ゲームの世界よね!?)
人生十七年目にしてカルミアは世界の真実に気づいたのである。
生まれてから十七年、これまで何度も疑問に感じることがあった。知らないはずのことを知っていたり、食べたことのない料理を作れたり。まるで自分がもう一人いたような気がしていたが、まさに自分には前世というものが存在したらしい。
カルミアとして生まれる前、自分は別の世界に生きていた。
その世界には魔法が存在しなかった。けれど魔法のように文明が発達していた。
離れていても距離など気にせず会話をすることが出来た。空を飛ぶことも、海に潜り海底まで行くことが叶った。