倒れたリシャールと、それを担ぐオランヌ、そして旅立ったはずのカルミアが並ぶ姿は学園を騒がせた。
ひとまずリシャールは職員寮の部屋に担ぎ込まれ、ベッドに寝かせることになる。一緒に部屋へと押し込まれたカルミアは帰るタイミングを失っていた。
こうなっては目覚めるまでとことん付き合おう。どうせ船に置き去りにされた身だ。
(そうと決まれば、何か食べるものを作ろうかしら)
リシャールはしばらく何も食べていなかったので、食べやすいお粥を作ることにする。
カルミアはトランクに詰め込んでいた米と塩を取り出した。何故乙女の鞄からこれが飛び出すかといえば、寮生活で残った食材だ。リシャールの部屋には生活感がないため、鍋は近隣の教師に貸してもらった。
水と米を入れて煮ていく。栄養のため卵も入れたいが、生憎持ち合わせがないため、常備していた小魚をちりばめることにする。
「うっ……」
「リシャールさん!?」
リシャールの声が聞こえると、カルミアは慌てて駆け寄った。
「ははっ……」
力なく笑うリシャールは何が可笑しいのだろう。
「あの日とは逆ですね」
「あの日って……」
カルミアも直ぐに思い出していた。あれはカルミアが学園にやって来た日のことだ。
あの時倒れたのはカルミアで、運んだのはリシャールだった。ずいぶんと昔のことのように思えるが、まだ一月も経っていないとは信じられない。もうずいぶんと長くこの人と過ごした気がするのはゲームの記憶があるせいだろうか。
(違うわね。私がリシャールさんとの日々を楽しんでいたから……)
けれど終わりは訪れる。
「すみません。先ほどはお騒がせを、見苦しいところを見せてしまいましたね。ですが、カルミアさんが学園を去ると聞いて、いてもたってもいられなかたのです」
「どうしてですか」
追いかけて来る理由がわからない。
「黙って去ろうとしたことは謝ります。確かに雇い主に挨拶も無しに退職したことは申し訳ないと思っていますが、こちらも出航の時間が迫っていましたので」
本当は言い訳だ。リシャールの顔を見て、別れが辛くなるのが嫌だった。
でもそれを知られてしまったら、リシャールに迷惑をかけてしまう。だから顔を合わせずに去るのがお互いのためだと思った。
ひとまずリシャールは職員寮の部屋に担ぎ込まれ、ベッドに寝かせることになる。一緒に部屋へと押し込まれたカルミアは帰るタイミングを失っていた。
こうなっては目覚めるまでとことん付き合おう。どうせ船に置き去りにされた身だ。
(そうと決まれば、何か食べるものを作ろうかしら)
リシャールはしばらく何も食べていなかったので、食べやすいお粥を作ることにする。
カルミアはトランクに詰め込んでいた米と塩を取り出した。何故乙女の鞄からこれが飛び出すかといえば、寮生活で残った食材だ。リシャールの部屋には生活感がないため、鍋は近隣の教師に貸してもらった。
水と米を入れて煮ていく。栄養のため卵も入れたいが、生憎持ち合わせがないため、常備していた小魚をちりばめることにする。
「うっ……」
「リシャールさん!?」
リシャールの声が聞こえると、カルミアは慌てて駆け寄った。
「ははっ……」
力なく笑うリシャールは何が可笑しいのだろう。
「あの日とは逆ですね」
「あの日って……」
カルミアも直ぐに思い出していた。あれはカルミアが学園にやって来た日のことだ。
あの時倒れたのはカルミアで、運んだのはリシャールだった。ずいぶんと昔のことのように思えるが、まだ一月も経っていないとは信じられない。もうずいぶんと長くこの人と過ごした気がするのはゲームの記憶があるせいだろうか。
(違うわね。私がリシャールさんとの日々を楽しんでいたから……)
けれど終わりは訪れる。
「すみません。先ほどはお騒がせを、見苦しいところを見せてしまいましたね。ですが、カルミアさんが学園を去ると聞いて、いてもたってもいられなかたのです」
「どうしてですか」
追いかけて来る理由がわからない。
「黙って去ろうとしたことは謝ります。確かに雇い主に挨拶も無しに退職したことは申し訳ないと思っていますが、こちらも出航の時間が迫っていましたので」
本当は言い訳だ。リシャールの顔を見て、別れが辛くなるのが嫌だった。
でもそれを知られてしまったら、リシャールに迷惑をかけてしまう。だから顔を合わせずに去るのがお互いのためだと思った。