レインの部屋を出たカルミアはそのままアパートの食堂へ向かった。このアパートの売りはなんといっても深夜まで営業している食堂だ。学生たちは登校前に帰宅後、そして休日と、いつでも温かいご飯を食べることが出来る。利用者からは大変好評な制度だ。
 学生たちは学園が再開したためレイン以外はほとんど登校している時間だ。いくらか落ち着いた食堂を訪れると、カルミアは彼女を労った。
 
「お疲れ様です」

「なんだ、小娘かい」

 学園にいた時と変わらない態度で調理を続けるベルネは、今やこのアパートの臨時職員として腕を振るっている。もちろん学食が再開するまでの働き先として紹介したのはカルミアだ。

「馴染んでいるようで安心しました」

「あたしに出来ないことがあるわけないだろ」

 アパートの従業員とは仲良くやっているようで、初日から喧嘩をしていた自分たちのことを思うと複雑でならない。ここで新たな料理を習得し、学食に帰ってくると張り切っているようだ。誰かのために料理をする喜びを思い出したベルネは学生たちとも上手く付き合っているらしい。
 ドローナは学園教師の仕事に専念しているが、営業が再会すれば戻ってきてくれると言っていた。ロシュも同様だ。

「もう行くのかい?」

「はい、船を待たせていますから。短い間でしたが、お世話になりました」

「本当だよ。世話が焼ける小娘だったねえ」

「ええと……今後も相談役として学食経営には携わるつもりでいますから、また会えた時はよろしくお願いします」

 清々するとそっぽを向かれたカルミアは苦い笑いで答えていた。
 宣言通り、カルミアはメニュー等の相談役として学食の手伝いをすることを決めていた。リシャールが目覚めれば正式に許可をもらう予定でいる。
 特別顧問の活動範囲が少しくらい増えてもいいだろう。父には内緒でカルミアは新たな仕事を手掛けようとしていた。

「せいぜい励むんだね。けど、なんだ」

「ベルネさん?」

「うるさいのがいなくなってせいせいするよ!」

 最後まで想像通りの反応に苦笑する。しかし時計に目を向ければ時間が迫っていた。
 名残惜しいが、ベルネとも別れの挨拶を交わさなければならない。