「で、でも、悲しい事ばかりじゃないわよね。新設備を導入した最新鋭の食堂を建設してくれるって、やったじゃない!」

 学食崩壊の報を聞きつけた教職員や学生たちが存続を訴えてくれたおかげだ。学食を必要とする声が多く寄せられているとオランヌが教えてくれた。

「みんなのおかげですね」

「そうそう! 国王陛下も建設を後押ししてくれたらしいんだけど、なんでも精霊たちに言われたらしいの。食事は大切だから早く学食を元に戻しなさいって」

「そ、そうなんだ……」

「でも、カルミアはもういないのよね。本当に行っちゃうの? 学食再開したら戻ってきたら?」

 オランヌもオズもカルミアが学園を去ることを残念がってくれた。それだけでなく、純粋にカルミアという個人との別れを惜しんでくれたのだ。
 同じ男性でもリデロとは随分違う。さすが攻略対象、女性のツボを心得ていた。

「でも、私の役目は終わったから」

 どこか引っかかるような物言いになってしまった。それでもカルミアは今日、学園を去るという決意を変えるつもりはない。

「せめてリシャールが起きてからにすればいいのに」

「ごめんなさい。私を待っていてくれる人たちもいるから……。参考人としての義務は終えたし、学食もあんな調子だから、私の居場所はないみたい。新しい設計には私も案を出させてもらったし、これからも相談役として協力させてもらうつもりよ」

「そう……。カルミアにも事情があるのね」

 オランヌはしぶしぶ引き下がる。

「あたしはこれから授業があるから、もう行かないと。カルミア、王都に来たら絶対あたしところに顔をだしてよ!」

「うん、またね!」

 手を振るカルミアの横にはいつのまにかオズが並び立つ。

「オランヌ先生は賑やかだよね」

「おかげで笑顔で旅立てそうよ」

「行くんだね」

「ええ。稼業の手伝いがあるの」

「本当は港まで送りたかったけど、残念。俺も授業だ。オランヌ先生と同じ言葉になってしまうけど、俺のところにも顔を出してほしいな。また会える日を楽しみにしているよ」

 そんな風に思ってもらえることが嬉しい。