長時間に及ぶ事情聴取の末、公表された真相は以下の通りである。

 あれは精霊たちが起こした災いだった。
 これは精霊からの警告である。人が精霊への感謝を忘れたのなら、再び同じことが起こるだろう。

 国王陛下の話では、カルミアが城を訪れるより前に、精霊が乗り込んできたというのだ。
 精霊と聞いたカルミアは瞬時にあの二人が陛下に何かしたのではと青ざめる。ドローナには悪役を張れるだけの才能が。ベルネもまた強烈な性格をしていることを思い出していた。

 一人は深紅の髪を靡かせる妖艶な女性の姿をしていたという。そして現れるなり警告を下したそうだ。
 これはドローナのことだろう。

 もう一人は深紅の精霊に引きずられるようにして現れたらしい。清廉な白を司る精霊で、こちらも若い女性の姿をとっていた。血の通わぬほどの白さでその表情は無に等しく、わずかたりとも顔色を変えることはなかった。
 おそらくこちらがベルネ本来の姿だろう。放心し続ける彼女はろくに口を開くことも出来なかったそうだ。

 三日後、学園は元通りに運営が再開された。
 幸いリシャール以外に怪我人はおらず、校舎も学食以外は無事であったことが早期再開の決め手となった。生徒たちは日常を取り戻し、教師たちも忙しくしている。
 けれど三日経ってもリシャールが目覚めることはない。
 いつ目覚めるのか、それはレインにもわからないという。そのレインはリシャールが目覚めるまで謹慎すると言い張り自主謹慎中だ。

 学食の仕事を失ったカルミアは休校中、今後について考えていた。そして三日間のうちに自分に出来ることのすべて終え、決断を下す。

 カルミアは今日、学園から去ることになった。

 密偵の任務が完遂したかと言われれば、それは否だ。しかし学食という居場所を失ったカルミアが学園に留まることは不自然でしかない。
 それにもう、リシャールが密偵を雇う必要はないだろう。