「それが、交渉が難航しているんです」
「というと?」
「気難しい方のようで、私では話にならないと会ってもらえませんでした。おかげで出航が遅れて、こうしてリシャールさんと会えたというわけです」
「そうでしたか。私としては助かりましたが、そういった事情があったとは知らず。すみませんでした。カルミアさんが困っているというのに無理を言ってしまったようで」
「気にしないで下さい。それに私、まだ諦めていませんよ。何度でも口説いてやるつもりです」
「そうまでする価値のある商品だと?」
「とても美味しいんです! みんながあの美味しさを知らないなんて損失ですよ。私はなんとしてでもロクサーヌの人達にも広めたいんです!」
迷いなく言い切るカルミアの熱意に、リシャールは自然とその言葉を口にしていた。
「カルミアさんは格好良いですね」
「へっ!?」
しかし不意打ちで褒められたカルミアは驚きのあまり間抜けな反応をしてしまう。やがてその言葉をかみしめると、次第に顔へと熱が集まっていく。
リシャールからの言葉はリデロたち家族からもらう言葉とはまるで違った。一言でカルミアの顔を染め上げるほどの威力があるようだ。
「すみません。女性に対する褒め言葉ではないかもしれませんが、率直にそう感じたものですから。仕事への姿勢も、志も、見習わせていただきたいと思いましたので。随分お若く見えますが、その若さで船長を任されていることにも納得です」
「お若く!? え、わ、私、若く見えます!? 嘘、本当に!?」
「はい」
「嬉しいです! 十八歳のはずが、何故かいつも歳上に見られるので……」
おそらくきつめの顔立のせいだろう。侮られないために強気な振る舞いをしていることも原因の一つかもしれない。せめてそうであってほしいとカルミアは常日頃から思っていた。
「十八……」
ところがリシャールはその数字を繰り返したきり無言になってしまう。
「リシャールさん? あの、まさかとは思いますが……」
「なんでもありません」
「リシャールさん!? にこやかに返しても遅いですからね!?」
リシャールの若いとはいったい何歳を推定していたのだろう。もしかしなくても十八よりも年上に見られていたのではないだろうか。カルミアは喜びの波が引いていくのを感じていた。
「ちなみに私は二十五ですよ」
ものすごく不自然に会話を逸らされた気がする。いったいいくつだと思われていたのだろう。ダメージ軽減のためにも追求するべきではないとカルミアは判断していた。
「というと?」
「気難しい方のようで、私では話にならないと会ってもらえませんでした。おかげで出航が遅れて、こうしてリシャールさんと会えたというわけです」
「そうでしたか。私としては助かりましたが、そういった事情があったとは知らず。すみませんでした。カルミアさんが困っているというのに無理を言ってしまったようで」
「気にしないで下さい。それに私、まだ諦めていませんよ。何度でも口説いてやるつもりです」
「そうまでする価値のある商品だと?」
「とても美味しいんです! みんながあの美味しさを知らないなんて損失ですよ。私はなんとしてでもロクサーヌの人達にも広めたいんです!」
迷いなく言い切るカルミアの熱意に、リシャールは自然とその言葉を口にしていた。
「カルミアさんは格好良いですね」
「へっ!?」
しかし不意打ちで褒められたカルミアは驚きのあまり間抜けな反応をしてしまう。やがてその言葉をかみしめると、次第に顔へと熱が集まっていく。
リシャールからの言葉はリデロたち家族からもらう言葉とはまるで違った。一言でカルミアの顔を染め上げるほどの威力があるようだ。
「すみません。女性に対する褒め言葉ではないかもしれませんが、率直にそう感じたものですから。仕事への姿勢も、志も、見習わせていただきたいと思いましたので。随分お若く見えますが、その若さで船長を任されていることにも納得です」
「お若く!? え、わ、私、若く見えます!? 嘘、本当に!?」
「はい」
「嬉しいです! 十八歳のはずが、何故かいつも歳上に見られるので……」
おそらくきつめの顔立のせいだろう。侮られないために強気な振る舞いをしていることも原因の一つかもしれない。せめてそうであってほしいとカルミアは常日頃から思っていた。
「十八……」
ところがリシャールはその数字を繰り返したきり無言になってしまう。
「リシャールさん? あの、まさかとは思いますが……」
「なんでもありません」
「リシャールさん!? にこやかに返しても遅いですからね!?」
リシャールの若いとはいったい何歳を推定していたのだろう。もしかしなくても十八よりも年上に見られていたのではないだろうか。カルミアは喜びの波が引いていくのを感じていた。
「ちなみに私は二十五ですよ」
ものすごく不自然に会話を逸らされた気がする。いったいいくつだと思われていたのだろう。ダメージ軽減のためにも追求するべきではないとカルミアは判断していた。