「リデロ、今すぐ王都の店に行ってありったけのバラの香水を運んできなさい。私の名前を出して構わないから、ありったけよ。それがあれば撃退もしやすいでしょう? ロシュ、リデロを手伝ってもらえる?」

 任せてほしいと走り出すリデロにロシュが続く。

「まずは生徒を避難させないと」

 カルミアが振り返れば、最後まで語らずともオランヌが頷いた。

「あたしは他の教師たちと連携をとって生徒たちを守るわ」

 カルミアが指示する前に今度はオズが提案をする。

「オランヌ先生が校内へ向かうなら、俺は外へ情報を伝えよう。これから登校してくる生徒もいるからね。校内に立ち入らないよう注意を促すよ」

 オランヌとオズはそれぞれの役割を果たすために動き出す。
 あとは残った自分がなんとかして開かれた扉を元に戻さなければならない。そうでなければ永遠に竜は増え続け、人の手に負えるものではなくなってしまう。

「それじゃあ、ここは私とベルネに任せなさい」

 ドローナはまるでここが厨房であるかのような提案する。料理の指示を仰ぐような軽快さで、この作業は自分たちに任せろと言うのだ。

「カルミア。貴女、あれが何か知っているわね」

 迷っている暇はない。カルミアは正直に答えた。

「止め方も?」

「知ってるわ。もしかしたら私にも止められるんじゃないかってこともね」

 魂を受け継いだ主人公にしか止めることは出来ないと記されていた。しかし血を受け継いだカルミアにならそれが出来るかもしれない。
 カルミアの答えはドローナの満足するものだったらしい。嬉しそうに、しかしとんでもないことを彼女は口にする。

「なら話は早いわ。行きなさい、カルミア」

「ドローナ!?」

「あれはアレクシーネに力を貸した私たちが憎いのよ。だから精霊の気配が濃い学食を目指したんでしょうね。意思もないくせに、身体が憶えているのかしら。だとしたら簡単な話よね。私たちがあれを引き付ける。そうすれば生徒たちのところには行かないでしょう?」

「でも危険よ!」