「カルミア!」

 会話が途切れたところでオランヌが息を切らして厨房へと駆け込んでくる。聞かれて困る話ではないが、困惑させてしまうことは間違いないだろう。ちょうど話が途切れたタイミングで助かった。
 では何故、彼がここにいるのか。不思議がるカルミアの疑問に答えたのはドローナだ。

「私が連絡を入れたのよ。カルミアが戻ったら教えてと言われたわ」

 何食わぬ顔でドローナが白状する。なんて良いタイミングだろう。

「リシャールに何されたの!?」

 直前まで会っていたせいか、オランヌの中ではすっかりリシャールが悪者にされていた。そのためカルミアは違うと説明するところから始める。

「何もされてないわ。リシャールさんは悪くないもの。ただ、私の料理が美味しくなかっただけ」

 リシャールの役に立てなかったこともすべては自分の責任だ。それでいて泣くとは情けなことをしてしまったと思う。

「うそ、リシャールがそう言ったの!? カルミアの料理が美味しくないって、そんなはずないでしょう!」

 学食を飛び出そうとするオランヌの行き先など決まっている。だからこそカルミアは叫ぶように引き止めていた。

「止めて!」

「でも……」

「リシャールさんには悪いことをしちゃったけど、でも本当にもういいの」

「良くはないわよ。リシャールってばカルミアの料理を不味いって言ったり、学園から出て行けって言ったのよ」

 やはりドローナは気が収まらないのか、洗いざらい吐き出してしまう。
 この発言にオランヌは瞬く間に憤りを見せる。

「それどういうことよ!?」

「お、落ち着いて、オランヌ。私はただ仕事の期間が終わっただけなの。早く出ていくようにとは言われたけど、これから交渉してみるつもりだから!」

「あたしが余計なことをしたから?」

「オランヌは関係ないわ。こうなることは最初から決まっていたもの」

「でも……」

 オランヌはそれでも納得出来ないと頭をかきむしる。