一瞬、何を言われたのか理解が出来なかった。

「どういうことですか……」

「言葉通りの意味ですよ」

 リシャールの言葉を頭では理解していても、突然のことに心が追い付いていなかった。

「そんな、急に……私が役に立っていないからですか!?」

「役に立つもなにも、貴女という存在が不要になったということです」

「頼まれていた問題は、解決したんですか?」

「はい。ですから即刻、私の学園から立ち去っていただきたいのです」

 リシャールの顔に笑みが戻る。しかしそれはあの優しかったものではない。冷たく、まるで貼り付けたようなものへと変貌していた。
 信じられない。信じたくないとまだ心は叫んでいる。しかしカルミアが雇われていたのはあくまでリシャールからの依頼であり、彼に不要と言われれば引き下がるしかなくなってしまう。

「本当に学園の危機は去ったんですか?」

「私の言うことが信じられないと」

「そんなことは! でも、それならあの手紙は……」

「手紙?」

「私宛に手紙が置かれていたんです。学園を出ていくようにと」

「さて、私の知ったことではありませんが、学園を去る貴女には関係のないことでは?」

 否定は聞かないと、リシャールの眼差しがカルミアを射ぬく。
 確かに名指しをされたのはカルミア個人であり、学園に危害が加わるようなものではない。リシャールが学園の危機が去ったというのなら、このままカルミアが消えることですべては丸く収まるのかもしれない。

 言いたいことはたくさんあった。正直に言えば、まだ納得は出来ていない。けれどここではリシャールの言葉が全てだ。反論を呑みこみ、なんとか頷いてみせる。