「中心にある黄色い食べ物はプリンといいます。今日は特別にフルーツをトッピングして、プリンアラモード風に仕上げてみました」

「きらきらして、まるで宝石みたい。私が知ってる食事と随分違うのね」

 ここまで無反応だったドローナが興味を示したことでカルミアは手ごたえを感じていた。美しい物や宝石を好むドローナなら気に入ってくれると思ったのだ。
 見ても楽しい。食べても美味しい。そんな食事があることをドローナは知らないだろう。

「食事なんて、ただの人間の栄養補給だと思っていたわ」

「もちろん栄養補給も大切ですよ。でも、こうして見て楽しむ料理もあるんです。もちろん美味しいんですよ。それにプリンだけじゃなくて、他にも綺麗で美味しいお菓子はたくさんあるんです」

「ふうん……」

 そっけない呟きではあるが、視線はしっかりとプリンに固定されている。ドローナはカルミアが勧めるまでもなく、自らスプーンを手にしていた。
 そしてプリンに触れその柔らかさに驚き、一口食べれば甘さに目を見開く。

「どうでしたか? プリン、美味しいですよね。私、大好きなんです」

「そうね。また食べたい、そう感じた気持ちがあることは否定出来ない」

 ドローナからは信じられないという感情が伝わってくる。そして躊躇いながらもドローナは問いかけた。

「他にもこういう食べ物あるのね?」

「たくさんあります。ありすぎて、全て作れるようになるには長い時間が必要になるかもしれません。料理に終わりはありませんから、私たち人間では時間が足りないかもしれませんね。でもドローナ先生なら、多くの料理を学び知ることが可能なはずで」

「貴女……」

 自分の正体を知っているのかと、ドローナはカルミアの反応を探ろうとしていた。
 しかしカルミアは疑問に答えず、代わりに手を差し伸べる。そんなことは関係ないとでも言うようにドローナを勧誘するのだ。

「学食体験も終わったことですし、もう一度言わせて下さい。ここで一緒に働きませんか? 私で良ければ料理も教えますよ」

「一緒、に……?」

「はい、一緒に! ドローナ先生が手伝ってくれると、こういったデザートの提供も可能になると思うんですよね」

「ふうん。そうなの……」

 いつかのカルミアと同じようにドローナの天秤も揺れているようだ。