空色のワンピースに袖を通し、雲のように真っ白なエプロンを身に着ける。よく晴れた空の色彩はカルミアが大好きなものの一つだ。
 昼休みを目前に控えた学食の厨房は戦場のようだとカルミアは思う。つまり、どこからみても可愛らしいこの衣装はカルミアの戦闘服ということになる。
 長く伸ばした髪は邪魔にならないよう一つに結ぶ。そうして出来上がるのは名家の令嬢ではなく、学食のお姉さんといったところか。

 学生たちがやってくるまであと少し。

 まずは本日のメニューについて確認しておこう。

 一品目はカレーライス。
 この国では馴染みのない料理でありながら、鮮烈なデビューを果たしてからというもの、瞬く間に人気メニューへと登りつめた品である。そのため毎日提供することを決めた固定メニューだ。
 鍋には作りたてのカレーをたっぷりと用意した。これを白米と一緒に提供する。

「カレーライス完成!」

 二品目はカルボナーラ。
 パスタも固定メニューとして提供を開始。ただし毎日同じ味付けでは飽きてしまうので、日替わりで味付けを工夫することにしている。今日はチーズが香るカルボナーラだ。

「カルボナーラ完成!」

 三品目は日替わりプレート。
 白米、サラダ、スープと、メインの一品がセットになったお得なランチプレートだ。メインの品とスープが日替わりとなっていて、本日のメインには目玉焼きを添えたハンバーグを用意している。

「日替わりプレート完成!」

 もちろんご飯の準備も出来ている。カレーと日替わりプレートの二品で提供するため、たっぷりと炊きあげたところだ。

「カルミアさん、注文入りました。カレー一皿お願いします」

 さっそく耳飾りから声が聞こえる。
 注文はフロアで会計を担当するロシュが通信用の魔法具を通して知らせてくれる。働き手は三人しかいないため、フロアとの連携は必須だ。

 最初の注文を切っ掛けに、そこから先は休む間もなく注文が入る。
 カルミアは作った料理をひたすら盛り付けフロアへ運ぶ。その繰り返しだ。

「今日はいつもより日替わりプレートの注文が多いわね。ハンバーグとスープは問題ないけれど、サラダが足りなくなりそう」

 料理の残り具合と来店状況から今後の方針を割り出すのもカルミアの仕事だ。