バイトの理音くんと別々に帰り、紗雪は塾へ。



あたしはひとり、家に帰る。



「おかえり」

「ただいまー。あっ、手伝うよ」

「大丈夫よ、このくらい」

「いいから、座っててよ」

「あのねぇ、妊婦も動かなきゃダメなのよ?由乃がお腹の中にいる時なんか、何時まで働いてたと思ってんの」

「…………そんなに甲斐性なしの父親だったの?」

「そうよ。本当、クズ。由乃に会いたいって言ってきたから、断ってやった」

「えっ⁉︎あたしに…会いたい…?」

「まぁ、ね。ロクな男じゃないから、会わなくていいの」

「なにしてる人…?」

「ヤクザ。はい、おしまい」



そっか、それは相変わらずなのか…。



あたしって、何気にヤクザの娘なのか…。



「工藤さんに出会ってよかったね、お母さん…」

「本当、まともな男って大好き」



本当のお父さんかぁ…。



どんな顔をして、どんな声で…どんな人なんだろう。



なんて、会わなくていいってお母さんが言うんだから、会わない方がいいんだよね、きっと。