仕方がない。



彼女をそのままにしておくわけには
いかない。

僕は嫌われることを決意した。


「あ、あのさ」

「えっ?あ、はい?!」

彼女は驚いた様子で僕を見る。


口元は、ケチャップがついたまま…


はぁ。


言うしかないのか…



「ちょっと、耳かしてくれないかな?」

首を少し傾けたあと、耳を寄せてくれた。


「口元、ケチャップついてるよ」


「っ!!!!」

声にもならない驚きを見せながら、
鏡を即座に取り出し、確認していた。


「うぁあ!!ほんとじゃん!?」


…良かった。泣いてない。
心の底から安堵する。



彼女は、口元のケチャップを拭いたあと、
赤くなった顔でお礼を言ってくれた。

「ありがと」

「いや、まぁ、うん…」


「そだ!友達にならない?」

「へ?」

「なんかさ、私って話しかけづらいタイプみたいでね。この高校に来てから、友達がひとりもいないんよ」


話しかけづらいんじゃなくて、
女の子の話しかけ方が分かんないんだよ…


彼女は何か勘違いをしているようだが、
面白いので僕だけの秘密にしておいた。



「で、君がよかったらなんだけど…」


上目遣いってかなり可愛いもんだな。


誰が彼女のお願いを断るというのだろうか。


「全然いいよ、友達になろう」

「やった!嬉しい」

そういって、彼女は笑顔をみせた。


彼女と距離が近くなったみたいで、
嬉しかった。





連絡先を交換している間、
クラス中から殺気を感じた。



じゃんけんの勝者である僕は、
奴らに向かってニヤリと笑ってやった。

             【END】