「…大地、ありがとう」


 私は大地の腕にパジャマの袖を通して、ひとつひとつボタンをつけながら言った。


「今、この世界に現れてくれて」


 コロナウイルスのニュースを見るたび、怖くなってた。


「『寂しい』って素直に、言わせてくれて」


 世界がどうなっちゃうのか、
 すごく不安だった。


「友達に会う勇気をくれて」


 でも、大地は今日
 思い出させてくれた。


「神社の桜を、咲かせてくれて」


 生きている喜びと、嬉しさを。

 未来への希望と、
 幸せに満ち溢れた気持ちを。


「…私の事、『俺の嫁』って…」


 この言葉、本当はすごく
 どきどきして、嬉しかった。


「…さくら」


 自分が大地に、結婚相手として
 必要とされていた事が。


「…私、嬉しいの。大地と一緒にいられる事が、一番」


 顔が真っ赤になった私を見て、
 大地は嬉しそうにこう言った。


「さくら、お前…やっぱ可愛いな」


 彼は愛おしそうに、
 ぎゅっと私を抱きしめ、


「一生幸せにしてやるから…俺だけを好きでいろよ」


 私の首筋にそっと、吸いついた。


「…!」


 くすぐったい。


 さっきよりとても、熱い。
 体中が、心臓になったみたい。


 目を潤ませ、
 切なそうに吐息を漏らし、


 顔を赤くした彼は、
 私の首筋から、口を離した。