「これ、お父さんのだけど。お風呂の後はこれを着て、このお布団で眠ってね」

 夕食が終わると、布団を敷いた和室へ大地を案内し、父のパジャマを彼に手渡した。

「どうやって着るんだ?」

「…こうやって袖を通して…」

 私が大地の体に、くるっとパジャマの上着を羽織らせたその時、


 彼は私をきつく抱きしめ、

 
「結婚しよ。さくら」


 私の肩に顔をうずめて言った。


「俺、…小さい時からずっと、お前が好きだった」


 顔が、かっと熱くなった。


「時々神社に来るお前の様子、見てた」


「…え?」


「拝殿の『龍の目』から。お前、毎日神社で感謝ばっかり伝えてた。願い事じゃなくて」


 ずっと、気にかけてくれてたの…?


「どんなに寂しくてもお前のおかげで、生きて来られた」

 大地は私を、さらにきつく抱きしめた。

「もう…本当は一瞬だって、お前と離れていたく無い」


 思い出す。

 夏祭りの後の寂しさを。


「私も、大地の事考えてた。…会えない時も」


 ずっと大地と一緒にいたくて、
 切なすぎて、涙が出た。


 ここ数年、特に。


 この気持ちは、
 恋だったんだ。


「俺の事、好き?さくら」


 私は頷いた。


「お前から、ちゃんと言って」



 やっと、自覚した。



「…大好き」



 大地と一緒に、生きていきたい。