「ねぇ晴?聞いてる?」

「あ、ごめんごめん」

「ほんとお前昔からいつもぼーっとしてるよな。もしかしてまた夜中勤務?」

彼らは幼馴染の橘詩織(タチバナシオリ)、西浦海浬(ニシウラカイリ)

あれから3日ほど経った

この前のことはあまり覚えてない

覚えていることは彼に告白されたこと

その彼があの霧山蓮だってこと

確か私はその返事を曖昧にした

だって芸能人と付き合うだなんて信じられなかったから

最後に連絡先を渡されて彼は東京の街に出ていった

あと…キス…

っていうかあのキス私のファーストキスだし!

でも嫌じゃなかった

「あそう言えば晴、久々に今度遊ぼうよ!お母さんのお菓子食べたいし」

「俺もゆきさんのクッキー食べたい」

お母さんは3人で遊んだ時によくお菓子を作ってくれた

でもお母さんのことは2人には言ってない

心配されたくなかったから

「今部屋汚いからまた今度ね?」

「わかった!」


学校が終わり家についた晴

真っ暗な部屋の電気をつける

いつもと変わらないのにどうしてこんなに寂しく感じるのだろう

そして無意識に彼に電話をしていた

(もしもし…)

久しぶりの彼の声

「久しぶりです。今って忙しいですか」

(大丈夫だよ。どうした?)

「いや、別に用事はないんですけど、なんか声聞きたくなっちゃって…」

すると優しい声で笑って言った

(じゃあせっかく電話してくれたんだし、なんか話そっか)

「はい…。あの、foreverってどうやって結成されたんですか」

(俺らさ今のメンバーで小学生の頃からバンドやってたんだ)

「小学生!?」

(みんな親が音楽関連で…路上演奏してた時に俺らを拾ってくれたのがnexty社長の神内さんってわけ)

「あの…」

バンッ

なに…?

するとそこにお酒の匂いを漂わせた母が入ってきた

「お母さん!なんで…」

「久しぶり〜。お母さんお金なくなっちゃって…あんたバイトしてるでしょ?ちょっとちょうだいよ」

晴はあまりの驚きに言葉を失っていた

「聞いてる?あんたは私のこと好きよね。大好きなお母さんが困ってるよ?」

何言ってんの?

今更なによ…

「今まで何度助けを求めても帰ってこなかったくせに、今更帰ってきて母親ずらしないでよ!今のあなたのことをお母さんだなんて思ったこと1度もない!」

今まで我慢していた言葉がどんどん出てくる

パーンッ

その瞬間頬に痛みがはしる

涙が溢れてきた

痛くて泣いてるのか、悲しくて泣いてるのか、怒って泣いてるのかわからない

「あーああのね、子持ちだといろいろと条件が悪いのよ」

どうしてこんなに変わっちゃったの…?

昔はたしかに私のことを愛してくれてたのに

「もう私のこと好きじゃないの?私は…いらない子なの?」

なんて言うか分かっているはずなのに

少し期待してる私はなんなのだろう

「そーよ。あんたなんか産まなければよかった」

その言葉を聞いた途端、糸が切れたかのように崩れ落ちた

いつからだろう

お母さんから晴って呼ばれなくなったのは…

暗闇の世界でひとりぼっちで泣いた