年が明け、ショップでは冬物処分セールが始まっている。これは2月の春物投入に備えて、売場を空けるという意味もある。


春物の生産は着々と進み、出番を待つばかり。しかし私達の目は既に夏物も通り過ぎ、秋冬物に向いている。


6月の展示会に向けて、私は陽菜さんから正式に一部商品のデザインを担当分けされて、平賀さんの言葉通り、一人立ちの第一歩を踏み出していた。


既に私は、何着かの商品のデザイン画を陽菜さんに提出。ディスカッションやダメ出しをされながら、書き直し、練り直しを進めていた。


「岩武、どうだ?」


そんなある日、私がパソコンの前で唸っていると、後ろを通りかかった平賀さんから声を掛けられた。


「はい。なかなかイメージ通りにならなくて。」


「誰のイメージ通りにだ?岩武のか?それとも丸山のか?」


「えっ?」


平賀さんの問いに、私は聞き返す。


「お前はこれがデビュー戦なんだ。あんまり難しく考えるな。とりあえず自分が着てみたい、憧れてるデザインを考えてみろ。もちろんそれだけじゃ、やって行けるわけないが、自分の好みの服を、着てみたい服を作ってみる。それがまず第一歩だ。」


「わかりました、ありがとうございます。」


私がそう返事をすると、平賀さんはポンと私の肩を叩き、笑顔を残して去って行く。


(そっか、まず自分の作りたい、着てみたいデザインを考えればいいんだ。)


私は目からウロコの思いだった。


午前中はそんなことをして過ごし、午後は取引先や親会社との会議、打ち合わせ。それが終わると、またデザイン画に取り掛かったり、情報やトレンドの調査をしたり。


そんな風にして、1日があっと言う間に過ぎて行く。