「でも大変だよね、石川さんは。結婚生活を始めるだけでも大変なのに、その上、海外生活だなんて。」


という私の言葉に


「何言ってるの?愛する人と一緒なら、どこだって都だよ。羨ましい。」


と彼氏いない歴が長くなってる美優は乙女顔。


「バ〜カ。そんな単純なもんじゃねぇよ。」


とツッコむノムに


「野村くんは、自分が振られたばかりだからって僻まない。」


とピシャリ。


「だから振られたんじゃない、円満に別れたんだ。何度言ったらわかるんだ。」


就職してから、彼女とすれ違いが続いていたノムは、結局先頃、破局してしまった。ノムは円満を強調するけど、振られたというと、やたらムキになって反論して来るから、怪しいよねとは美優の言。


そんなことをまた、キャーキャーとやり合ってる2人だけど、私は気付いている。


実はノムは美優に気がある。ノムが彼女と別れた理由はすれ違いが最大の理由だろうけど、ノムのその気持ちも大きかったんじゃないかと思っている。


だけど一方の美優には、全くその気がなく、従って全く噛み合わない。今もそんな2人のちぐはぐなやり取りを尻目に、空腹を満たそうと、料理を口に運んでいると


「そうでしょ?由夏。」


と突然話を振られて、ビックリ。


「えっ、何?」


「由夏、聞いてなかったの?」


ゴメン。2人がじゃれ合ってる(私から見れば)光景は特に目新しいものではないし、お腹もペコペコなんで、全く聞いてなかった。で、何・・・?


「野村くんがさ、離れていれば愛はやがて消えるって言うんだよ。そんなことないよね?ね、由夏!」


えっ、いつの間にかなんで、そんな重い話題になってるの・・・。一瞬キョトンとした私は、美優の訴えるような視線に気が付くと、次の瞬間、激しく首を縦に振っていた。