「まさかそんな風に取られるなんて思ってもみなかったから、愕然としてな。ふざけんなって、よっぽど怒鳴り返してやろうかと思ったけど、別のコ-チがそれは言い過ぎだってたしなめてくれたし、当の橋上もあとで、俺はそんな風に思ってませんからって言ってくれたから、まぁその場はそんなつもりは、もちろんありませんでしたけど、申し訳ありませんでしたって頭を下げたよ。」


「・・・。」


「あのリ-ドには、もちろん俺なりの根拠と自信があったんだが、まぁ打たれちまえば、どうにもならない。俺達の世界は結果がすべてだからな。」


聡志が悔しさを噛み殺して話してることがヒシヒシと伝わって来る。


「偶然とは言え、お前が見に来てくれた試合でチャンスもらって、なんとかいいとこ見せようと、張り切ったんだが、力不足は如何とも、し難かった。さっきも言ったように、俺は本当はお前を、一緒に仙台に引っ張って来たかったんだ。でも今の俺には、お前に俺を信じて、この胸に飛び込んで来いなんて、言う資格も自信もとてもない。とんでもない世界に飛び込んじまったなぁと正直思ってるし。」


「聡志・・・。」


「でもな、決してめげても後悔もしてねぇよ。だから、もう少し俺に時間をくれ。せめて俺がプロ野球選手の端くれだと、多少は胸を張れるようになるまで。それまで、寂しい思いをさせるけど、許してくれ。」


そう言って、私を真っ直ぐ見つめる聡志。


「あと・・・『誰か他に好きな人がいるの?』みたいなこと言われたけど、それだけは絶対ねぇから。俺はバカみたいにあの5歳の時の約束信じてるから。俺にはお前しか、由夏しかいねぇから。プロ野球選手としての成功は・・・残念ながら今は約束できねぇ。けど、それは、それだけは約束出来るから、絶対に。」


その言葉を聞いた瞬間、私は聡志の身体に抱きついていた。


「聡志、ゴメンね。ごめんなさい!」


そう言って、自分の胸に顔を埋めた私の背中を、聡志はしっかり抱きしめてくれた。