全てが終わり、私は聡志の腕の中にいた。さっきまでの激しい営みが嘘のように、私は聡志に優しく包まれていた。


何度も聡志の手で、私は高みに導かれた。そして聡志も私の中で、達した・・・はずだ。だけど、その証が私に注がれることはなかった。


「ねぇ。」


「うん?」


「今夜は帰らないで。」


「えっ?」


「ずっとこのまま一緒に居たい。お願い、帰らないで。」


そう言って甘える私に


「無茶言うなよ。そんなこと、出来ないことくらい、知ってるだろ。」


困惑した表情で答える聡志。そう、寮に帰らなければならない、そんなことは百も承知。でも今日の私は、プイッと聡志に背を向ける。


「由夏・・・。」


そんな私の後ろから手を回して、聡志は胸をまさぐろうとするけど


「イヤ!」


そう言って、私はピシャリとその手を払いのける。


「由夏、一体どうしたって言うんだよ。」


ますます困惑の色を深める聡志。


「私ワガママ言ってるのもわかってる、聡志を困らせてるのもわかってる。だけど・・・。」


ここで私はまた聡志の方を向いた。


「今の私は、ものわかりのいい彼女でなんか、いられないんだよ!」


「由夏・・・。」


「満里奈ちゃん、明日朝から大澤くんとデ-トなんだって。」


「えっ?」


「電話でも話したけど、悠の赤ちゃん、本当に可愛かった。その赤ちゃんを見つめる悠は本当に幸せそうで、その横で2人を見つめる白鳥先輩は本当に優しい表情で・・・羨ましかった。ねぇ、聡志は試合も練習も明日休みだよね。なのに、私午前中で帰らなきゃならない。私が帰りの列車がそれしか取れなかったから、そしてあなたが夕方には埼玉への遠征に出発しなきゃならないから・・・。でも離れ離れじゃなきゃ、もっと一緒にいられるよね。」


「・・・。」


「さっきはいっぱい愛してくれて幸せだった。でも、なんで避妊なんかするの?俺の子供身籠って、早く俺のところに来いって、なんで言ってくれないの?グズグズしてたら私だって、ひょっとしたら、堀岡さんの奥さんみたいに、聡志の赤ちゃん産めなくなっちゃうかもしれないじゃん!」


目にいっぱい涙を溜めて、そんなことを訴える私の顔を、聡志は見つめていたけど、やがて


「お前、本当にそれでいいのかよ?」


とポツンと、でも私に突きつけるように言った。