ドラフト2巡目指名選手の中にも、聡志の名前は出なかった。もっとも、あいつに対しても、いくつかの球団から挨拶があったそうだけど、いずれも評価は下位指名候補だったみたい。


一般的に、「ドラフト上位指名」とされるのは、3巡目指名まで。あいつの名前が呼ばれるとしても、まだ先のことになるだろう。


3巡目指名が、今度は折返しの形で、2巡目とは逆の順番で始まった。そして、6番目のEの順番になった時だった。


『第3巡選択希望選手。E、塚原聡志。投手、TK大学。』


というアナウンスがテレビから流れた。


「へっ?」


その瞬間、思わず私は、間の抜けた声を出してしまった。横で悠も加奈も固まっている。そんな私達の耳にもう1度同じアナウンスが聞こえ


『ここでEは、TK大の二刀流、塚原聡志の指名です!』


と実況アナウンサーのやや興奮した声と会場の歓声が入って来る。


なおも状況が理解出来ずに、ポカンとしてる私に


「凄いじゃん、塚原くん、3巡目指名だよ!」


「それもEだなんて、やっぱり縁ってあるんだね!」


悠が、加奈が、相次いで声を掛けてくれる。


「やったね、由夏。おめでとう。」


そう言った悠の満面の笑みが、目に入った瞬間


「悠!」


と私は彼女に飛びついていた。


「よかったね、由夏。」


横でそう言ってくれた加奈に


「うん、ありがとう。」


と答えた私も満面の笑み。


「ありがとう。3巡目なんて・・・信じられない。あいつが、聡志が・・・嘘じゃないよね?」


「嘘でも、間違いでもないよ。」


そう言って優しく微笑む悠の顔を私は間近に見つめる。


「じゃ、祝杯だ。由夏、冷蔵庫開けさせてもらうよ。」


「うん。」


加奈がそう言って、この時の為に、冷やしておいたワインを取り出してくれる。今日は奮発しちゃった・・・。


(聡志、やったね、おめでとう。)


悠に抱きついたまま、私は離れている聡志に祝福の言葉を送っていた。