そうこうしてると、聡志が到着。


「聡志。せっかくのお休みなのに、申し訳ないよ。」


挨拶もそこそこに、私が文句を言う。


「いや、俺もそう言ったんだけど、由夏が来るなら是非連れて来てって、マスタ-も奥さんも言ってくれるからさ。」


「でも・・・。」


なんて言っていると


「さっそく、お料理始めていいかしら。」


と奥さんから声が掛かる。


「お願いします。」


聡志が答えると、サラダから始まったスペシャルコ-スがスタ-ト。今回はサラダとは別に前菜が付き、メインのお肉料理の他にお魚料理も出る本格的なコ-ス。ワインなんかも出してもらって、しばし大人のディナ-を堪能。


とにかく料理だけでなくて、デザ-トもライスまでがとにかく美味しくて、私もつい調子に乗って、料理評論家かフードレポ-タ-もどきのコメント、解説を口走って、それを聞いた奥さんだけじゃなくてご主人にまで感心されて、ちょっといい気に。


「由夏ちゃんは、デザイナ-じゃなくて、料理人になればよかったのになぁ。」


なんてマスタ-に言われて、ようやくハッと我に返った。


「す、すいません。私、なんか調子に乗って、偉そうに・・・。」


慌てて謝ると


「いいんだよ。生半可な知識を振りかざしてるような奴にいろいろ言われても、ムカッと来るだけだけど、君は自分でちゃんと料理が出来て、料理が好きで、変に食通ぶることなく、素直な感想を言ってくれる。それが嬉しいんだ。」


と暖かく笑い掛けて、ご主人は後片付けに厨房に戻って行った。


「主人は本当に嬉しいんだと思う。」


その後ろ姿を見送りながら、奥さんが呟くように言う。


「私達にも、ちょうど由夏ちゃんくらいの齢の娘がいた。正確に言うと、いるはずだったの。」


その言葉に、私達は思わず奥さんの顔を見る。


「私が産んであげられなかった。死産、だったの・・・。」


「えっ・・・?」