本来は高校で1年先輩だった白鳥さんが、甲子園の最後の試合で肩を壊し、治療で1年休学した為に留年して、私達と同じクラスになった。


白鳥さんへの憧れをずっと胸に秘めたまま、でも何も言えずにいた悠。先輩が普通に卒業していたら、恐らく2人は出会うことはなかったはず。やっぱり運命、だったんだよね。


それから4年。超高校級投手と評判の高かった白鳥先輩は、結局怪我で選手を諦め、大学で指導者になる資格を取ると同時に、野球の素晴らしさ、面白さを人々に伝えたいと新聞記者になった。


先頃めでたく入籍を済ませ、「白鳥悠」になった彼女は、そんな旦那さんを身重の身体で支えながら、その愛しい人との愛の結晶をこの世に産み落とす日を迎える準備に忙しい。


「悠がミセスになったのも、もうすぐお母さんになるのも、実はあんまり実感わかなかったけど、今日悠に会って、ああ本当なんだなって、改めて思った。」


そんな加奈の言葉に、ニコリと笑って見せる悠。


その後も、私達は3人で久しぶりに楽しく語り合った。


お陰様で大学時代も、会社に入ってからもたくさんの友達に恵まれてる。でも私にとって、この2人は他の友達には悪いけど、ちょっと別格。たぶん何があっても、一生付き合って行ける、まさに親友。


時間は瞬く間に過ぎて行き、まだまだ喋り足りない気がしたけど、やっぱり悠の身体が心配なので、そろそろお開きに。


「ねぇ、悠。」


「うん?」


帰り際、私は悠に声を掛けた。


「今更なんだけど。」


「なに?」


「本当に後悔してないの?」


その私の言葉に、加奈がビックリしたようにこちらを見る。だけど悠は


「うん。」


とすぐに頷いた。


「今の私とお腹の赤ちゃんはまさに一心同体。もし私が後悔してたら、すぐ伝わっちゃうんだから。そんなの可哀想だよ。」


「悠・・・。」


そんなことをいつものスマイルで言う悠に、今度は私の方がバカなことを聞いてしまったと後悔する。


「由夏は今度、塚原くんの所、行くんだよね。」


しかし、悠は何も感じてないかのように私に言う。


「うん。」


「よろしく伝えてね。塚原くんは、徹くんやみんなの思いを背負って頑張ってるんだもん。応援してるからね。」


「・・・ありがとう。」


その悠の言葉に、私はちょっと複雑な思いで頷いていた。